学部長メッセージ

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―興味・関心が、学びの第一歩―

新潟大学法学部長
上村 都
UEMURA Miyako

 友達と夏休みに旅行に行くとします。海に行きたい人、山に行きたい人、西がいい人、東がいい人など、意見が一致しません。あなたならどうやって行き先を決めますか?ジャンケン、くじ引きもありますが、わたしたちの社会では、重要なことは多数決で決めるのが普通です。法律は議員の多数決で議決されますし、判決も、裁判官の多数決で決まります。

 では、多数決とはどのような方法でしょう。多数決は、「半数プラス1人」とは限りません。例えば、憲法改正の発議は、衆参それぞれで総議員の3分の2の賛成が必要です。そのほかにも、憲法には「3分の2以上の多数」と書かれた条文がいくつかあります。なぜでしょう。

 裁判も、単純な過半数によるとは限りません。日本では裁判官の過半数(最高裁大法廷なら15人中の8人以上の裁判官、小法廷なら5人中の3人以上の裁判官)で裁判が決まりますが、ドイツの連邦憲法裁判所は、そもそも裁判官の数が偶数の8人です(4人対4人なら合憲、5人以上が違憲の場合にのみ違憲)。韓国の憲法裁判所の裁判官は9人ですが、法律を違憲にするには6人以上の裁判官が賛成しなくてはなりません(5人が違憲、4人が合憲なら合憲)。なぜでしょう。

 なぜ・・・と疑問に思うこと。それが大学での学びの第一歩です。そして、政治や裁判においては、対立する主張の両方にそれなりの論拠があり、真実があります。法を学ぶということは、対立する主張に耳を傾け、それぞれの論拠を比較し、考量することにほかなりません。なぜ憲法や法律ではそのようなルールになっているのか、なぜ原告はそのような主張をするのか、これらのなぜ?により、奥深い社会科学の世界の扉が開かれます。新潟大学法学部には、疑問を発見し、考え、議論するためのさまざまな資料、教員、ゼミやクラスの仲間がそろっています。さまざまなことに関心を持ち、論理的でバランスの取れた判断能力を身につけてください。

 なお、多数決ですが、ユダヤには「全員一致は無効」という考え方があるとされます。なぜ無効なのでしょうか?考えてみてください。

プロフィール

三重県生まれ。専攻は憲法学。
岩手大学を経て、2009年に新潟大学に赴任。
2023年4月より法学部長。