【内田ゼミ】どのような会社かをイメージしながら、会社をめぐる紛争の解決方法を探る

准教授内田 千秋UCHIDA Chiaki

「六法」には、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法があります。会社法は商法の一分野であり、会社に関するルールを定めています。明治32年に商法典が制定された際、会社に関するルールは商法典に含まれていました。日本の社会や経済の発展に伴い、会社に関するルールは頻繁に改正されてきました。平成17年には、商法典から独立して、会社法が制定されました。

会社法に定める会社には、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類があります。統計によれば、株式会社は2612677社あり、会社全体の93.7%を占めます(国税庁長官官房企画課「令和3年度分会社標本調査―調査結果報告―税務統計から見た法人企業の実態」(令和53月)14頁第4表参照)。 

株式会社と聞いて皆さんがイメージするのは、上場会社(証券取引所で株式が売買されている会社)のような大手の会社でしょうか。現在、4000社弱の会社が証券取引所に上場しています。上場会社の会社経営の効率化が日本経済を発展させる一方で、その会社不祥事は多方面に影響を及ぼしますので、上場会社では特に、コーポレート・ガバナンス(会社経営の適法性や効率性を確保する仕組み)が重視されています。また、上場会社には、多数の個人投資家に加えて、一定割合の株式を保有する機関投資家(保険会社、年金基金等)も登場します。上場会社は、国内外の機関投資家のシビアな目に耐えうる会社経営を行う必要があります。

ところで、先ほどの統計によれば、資本金1000万円以下の株式会社が2256156社と大多数を占めています。こうした中小規模の会社のほとんどは、家族経営や親族経営の会社のようです(いわゆる同族会社)。このような会社において紛争が生じた場合、会社法に関わる案件に見えても、その発端は親族紛争や相続問題だという場合が多いといえるでしょう。また、最近では、経営者の高齢化に伴い、次世代への事業承継を円滑に行うことが急務となっています。

このように、同じ株式会社であっても、実は、全く違うタイプのものが混在しています。そのため、会社法は、株式会社の規模や性質に応じて異なるルールを設けています。例えば、株式会社では経営者である取締役を株主総会で選任しますが、中小規模の会社では取締役が1名だけでも許される場合があります。これに対して大規模な会社の一部では、コーポレート・ガバナンスの観点から、取締役会(取締役3名以上で構成)に加えて、監査役会(取締役による経営のチェックを担当)等を置くことが要請されます。異なるタイプの株式会社を想定したルールが会社法という一つの法律の中に詰め込まれていますので、最初のうちは、会社法の条文を「解読」するのが大変かもしれません。しかし、どのようなタイプの会社が問題となっているかを具体的にイメージしながら勉強を進めていけば、会社法の面白さを発見していくことができるのではないでしょうか。